システム研究

インターネットを中心としたシステムは、様々な機能拡張、利用者の拡大、計算・通信機器の性能進化とともに過去類を見ない規模へと成長し、同時に様々な技術開発がなされてきました。一方で、半世紀以上も前に基礎的なアイデアとして設計されたインターネットは、今日の全ての要求を満たす事ができず、再設計が必要との議論も出てきています。

こういった現状を踏まえ、今日利用しているインターネットに不足している部品の拡張、修正を、現状のシステムの分析、検証、改善手法の設計・提案、実証実験等を通して、インターネットシステムそのものを改善する研究開発を実施しています。

ライブラリ OS

オペレーティングシステム(OS)は今日のIT技術の中核をなし、計算機の進化と共に様々な技術開発がされ、その性能や利便性は向上し続けてきました。OSは、計算機上で消費される資源を、どのように利用させるかを制御する頭脳として存在し、また様々な用途毎にその制御の方式も存在します。この成熟した技術であるにもかかわらず、今日の利用形態の進化とともに、OSとその中核をなすカーネルの実装方式には、必ずしも全ての利用形態において動作できないという課題があります。このような様々な利用形態において、現在の進化したOSを利用でできるような機構を、計算機仮想化とは異なるアプローチで実現しようと研究開発をしているのが、ライブラリOSプロジェクトです。

ユーザー空間からの OS 機能拡張

コンピュータがインターネットで通信を行うための機能等は、これまで多くの場合、OS から提供されてきましたが、近年では、性能や拡張性の観点から、ユーザー空間で実装することの利点が指摘されています。一方で、OS 機能をユーザー空間で置き換える仕組みが整備されておらず、結果として、これまでのユーザー空間における OS 機能実装には汎用性や再利用性に課題がありました。本プロジェクトでは、それらの課題を解決すべく、OS 機能をユーザー空間から拡張するための仕組みについて研究を行っています。

クラウドアプリケーション高速化エンジン

今日のコンピュータアーキテクチャにおいては、ウェブサーバやキーバリューストア、データベース等のクラウドアプリケーションは、アプリケーションそのもののロジックによる計算とともに、ネットワークやファイルを操作するための処理のホストCPUを利用しています。ネットワークの速度が何百ギガbpsにもなると、この処理にかかるコストは無視できない程となります:過去の研究では、このような高速なネットワークの処理では、CPUサイクルのうち半分をTCP/IPの処理に要する事が知られており、これが原因でアプリケーションが十分な計算リソースを利用できないケースが存在します。ネットワークベンダーは、SmartNICと呼ばれるネットワークカードデバイスにおいて、元来パケットの送受信の機能しか有していなかったデバイスにおいて、暗号処理やチェックサムの計算といった処理だけでなく、従来ソフトウェアで実行していた処理をネットワークデバイス内で実行できる仕組みを提供しています。こういったタイプの SmartNIC はその柔軟性やプログラム可能な特徴により研究開発が盛んに行なわれており、このプロジェクトでは前述のTCP/IP処理を、ホストCPUで行う代わりにネットワークデバイス上で実行する事で、アプリケーションが利用可能なCPUサイクルを増やし、パフォーマンス向上を目指します。

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