メンバー: 長 健二朗, 田崎 創, Jean-Francois Baffier

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  1. 背景:
  • 技術研究所の異なる研究プロジェクトの方向性を束ねるビジョンが必要。
  • 分散クラウド構想を具体的な研究に発展させる。
  1. 目的:
  • 計算と通信が融合する自律分散クラウドのビジョンを構築し共有する。
  • シンプルなモデルを使ってクラウドモーフィングのアーキテクチャを提案する。

クラウドモーフィング

  • 利用パターンに応じて動的に構成が変わっていくクラウド
    • 環境に偏在する多様な資源を利用してマイクロサービスを実現する。
      • インタラクティブなジョブはユーザの移動に追従。
      • データインテンシブなジョブはデータの近くで実行。
      • 障害や災害にも柔軟に適応。
  • 擬似コストを用いた資源管理モデル
    • アイドルリソースプーリングを実現するコンベックス コスト関数。
    • エッジクラウドのエネルギー消費削減を実現。

Cloud Morphing構想

Cloud Morphingは将来の分散クラウド環境に向けて我々が提唱する研究ビジョ ンである。2030年ごろのインターネットとクラウドサービスが統合された世界 を想定している。 ここでは、クラウドサービスのインフラ資源(ストレージ、CPU、メモリ、通 信など)は環境に遍在していて、これらの資源を動的に組み合わせてサービス が実行される。資源の割り当ては利用に応じて動的かつ自律的に最適化される。 さらに、利用状況に追従して計算やデータも移動して、最適な場所にエッジが 自動形成され、サービスの構成も変形する。 このようなクラウドの利用資源の構成と結合が動的に変化する世界観をCloud Morphingという言葉で表してる。

Cloud Morphingが実現されれば、サービスの利用者も提供者もデータの保存 場所や計算や通信を意識する必要はない。 そうなると、クラウドインフラも現状の規模の優位性を求める集約型から、ロー カルなニーズに柔軟に対応できる分散型とのハイブリッド構成に発展すると考 えている。

クラウドインフラの仮想化

Cloud Morphingの基盤技術となるのはクラウドインフラの仮想化である。 元々クラウドサービスは仮想化技術の産物であり、仮想化されたサーバ、 ストレージ、ネットワークを切り出してサービスを提供している。しかし、ク ラウド自身はまだ物理クラウドインフラ上に構築されている。 次のチャレンジは、クラウドインフラの仮想化である。 サーバが仮想化されたように、いずれクラウドインフラも仮想化されるのは必 定である。現状の(エッジ)クラウドインフラはまだ人が設計しているが、や がて機械がインフラ資源(計算、ストレージ、ネットワーク)を動的に割り当 てるようになる。

クラウドインフラの仮想化は、インフラ資源を提供するクラウドが広域に広がっ たようなモデルである。 現状のクラウドインフラはPCサーバ群とClosネットワークで構成されているが、 将来はもっと多様なハードウェアで構成されると予想し、 広域ネットワーク上の多様な利用可能資源をpay-as-you-goモデルで自由に 組み合わせて使えるようになると想定している。 多様な計算資源の有効利用が可能になるのでサステナビリティにも貢献できる。


動的に構成を変えるクラウドモーフィング


コンベックス コスト関数

2023年度進捗

2023年度は、自律分散型のクラウドインフラ資源割り当てモデル論文にまとめ、 Edgesys2023で発表した。 このモデルでは、各インフラ資源の利用に負荷状況に応じて変動するシャドウ コストを導入し、ジョブの実行時に利用資源のシャドウコストを最小化するよ う割り当てを行うことで、自律的な負荷分散を実現する。 サービスのジョブ定義で通信や計算やデータアクセスなどの資源タイプについ て重み調整をすることでジョブ特性に応じた資源割り当てがなされる。 また、資源管理側では資源ごとに負荷に対するシャドウコスト関数をカスタマイ ズすることで、自律分散的に資源の利用され方を調整することができる。

2024年度進捗

2024年度は、京都大学 首藤研究室と共同研究を行い、昨年発表した自律分散型 のクラウドインフラ資源割り当てモデルを拡張して、計算と通信の制約をバラ ンスさせるモデルを論文にまとめ、IEEE CCNC2025で発表した。

このモデルでは、資源割当の制約をハードな制約とソフトな制約に分け、シャ ドウコストを使って複数のソフトな制約間のバランスをとる。 論文では、ドローン群を近傍のエッジに割り当てる例題を用い、ドローンとエッ ジ間の距離制約とエッジの負荷制約をバランスさせる効果をシミュレーション で示した。

現在は、細粒度の資源割り当てを可能とするためにサービスのマイクロサービス 化や、最適な場所へのデータ移動を可能とする分散ストレージについて調査を 続けている。

Cloud Morphingで想定しているような世界の実現にはさまざまな技術革新が必 要となる。また、アプローチの仕方も関連技術の発展にしたがって変わっていくこ とになる。そこで、我々は、Cloud Morphing構想を掲げつつ、幅広いテーマに 関して研究開発に取り組んでいる。

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